慈愛のケモノ
必然的に正面が遠月さんになった。
目が合って数秒、逸らされることはない。
寧ろ私が逸らした。
「忙しかった?」
「はい、やっとひと段落しました」
「お疲れさま」
普通の会話はできる。隣で真希がメニューを開いてドリンクを決めていく。
真希と水本さんを中心に、話はまわっていった。
四人での会話はそれなりに楽しくて、いや思うよりずっと楽しくて、来て良かったかもなと思い始めていた。
その気持ちも、三杯目のお酒を飲んだところで切れた。
「眠い」
がくん、と頭が落ちた感覚。
どろりと眠気が襲う。