慈愛のケモノ

ハッと目覚めて、テーブルの上のグラスがぼやけて見えた。

「お、起きた」

正面から遠月さんの声がしてそちらを見る。お冷を手に持っていて、飲もうとしているところだった。

途端に喉の渇きを覚えて、テーブルの上を視線が彷徨う。

「飲む?」

と、遠月さんが持っていたお冷を差し出してくれた。躊躇わず受け取って喉を潤す。

「ご馳走さまです」
「良い飲みっぷりだ」
「何時ですか?」
「いや10分くらいしか寝て無かった」

斜向かいに水本さんの姿がなくて、隣を確認した。静かにお酒を飲む真希と目が合った。

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