慈愛のケモノ
それに安堵して、嘆息する。
「琉花、遠月さんに懐いたねえ」
「えっ」
「いや、俺が琉花ちゃんに懐いてんの」
「えっ」
「あ、そうなんですね?」
暗号文で会話しないでほしい。そして私は全然遠月さんに懐いているつもりはない。
水本さんが帰ってきて、私を確認した。
「おー起きた」
「すみません、落ちました」
「いきなり突っ伏すから死んだかと思った」
「いつも心臓に悪いです」
溜息を吐く真希がグラスを置く。
ハッと気付いて、水のグラスを遠月さんにお返しした。あ、中身なかった。
一連の流れを見られたらしく、遠月さんが静かに笑っていた。