慈愛のケモノ
半歩先を歩く遠月さんの背中を見る。
きっと今、あの貼り付けた笑みは消えているに違いない。
立ち止まって、走って逃げてみちゃおうか。
それとも意地悪く、真希と水本さんてお似合いですよね、と言ってみようか。
私に構ってくるあなたを、ぐちゃぐちゃに傷つけてやりたい気持ちになる。
「水本さんたちと飲まなくて良かったんですか?」
「うん?」
くるりとこちらを向く顔。
「まあ、水本とはいつでも飲めるし」
「真希とは?」
「あの子、狙ってんの水本じゃねーの?」
「遠月さんが真希と一緒に居たかったんじゃないのか、聞いてるんです」