慈愛のケモノ

自然と足が止まる。同じように遠月さんも立ち止まった。

「その愛想笑いみたいなのも、何ですか? そんな風に笑ったって、私は真希のこと売ったりしないですから」
「売られても困るけど」
「もう遠月さんの連絡先も消しましたし」
「あーやっぱり? ね、琉花ちゃん」

いつの間にか遠月さんはしゃがんで、私を見上げていた。月明かりが焦げ茶の瞳を光らせる。

身長の高いひとがしゃがんでも結構高いままで、私はそれに驚く。

「琉花ちゃんが優しい奴がタイプつったからニコニコしてただけだし、俺みたいに執念深い人間と夜二人きりになったら駄目だよ」

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