慈愛のケモノ
私の、タイプ。
夜、二人きり。
言葉が頭の中で反芻する。
「な、なんで私のタイプ……」
「ん? 水本経由の情報」
「じゃなくて、どうして私のタイプになるんですか」
「あ、そこ? 俺のタイプが琉花ちゃんだから」
それを聞いて、一歩後退しようとした。その前に手を掴まれる。遠月さんの動きは早くて、あの言葉を思い出す。
『追いかけるよ』
カチリと記憶と事実が一致し始める。
「俺が好きなの琉花ちゃんだから、あの子の情報売られても水本に流すくらいしか使い方ないし」
手を掴まれて、逃げられない。