慈愛のケモノ

「今笑ってた?」
「え、どうだろ」
「笑顔見逃した……」

あからさまに残念がる。それにどう声をかければ良いのかわからなくて、黙っていると遠月さんは眠そうに瞬きした。

「親も子供も、一人の人間じゃん」
「……はい」
「幼いうちは親に嫌われたら生きてけないって思ったりもするだろうけど、琉花ちゃんはここまでちゃんと育ったろ」

頷いて返す。ちゃんと、かどうかは分からないけれど。

「琉花ちゃんがどう思ってるかは分かんねーけど、俺はその母親に琉花ちゃんを産んでくれたことだけは感謝しとく」

後ろ髪を梳かれた。

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