慈愛のケモノ
私はどう思ったんだろう。
母を、ああなってしまった母を、支えられなかった自分を。
「それで、母親が愛さなかったぶん、俺が愛すよ」
私は出来損ないで。
心の裏側に、穴が空いていた。
「……遠月さんって、人生何回目のひと?」
「一応三回目のひとです」
「嘘だ。初対面で目逸らしたもん」
「あの時は見過ぎたら逃げられるかなと思って。琉花ちゃんに好かれるために分岐点間違えずにやっとここまで来れた」
静かに笑っている。
その笑顔が見たかった。
じわじわと穴が埋められていく。
「え、笑うとこだろ」
ぼろぼろと泣いていると、遠月さんが慌てたように頬を拭ってくれる。
涙舐めても良い? とその後訊いてきた。