強引な副社長の婚前指南~偽りの極甘同居が始まります~
全部自分が蒔いた種なのに、惨めな気分に涙が溢れる。八雲さんに嫌われたかと思うと、一度溢れ始めた涙を止めることができなくなってしまった。
 
でもここはホテルで大きな声を上げて泣くわけにもいかず、声を殺して咽び泣いていると、慌てて客室に戻ってきた。

「どうした? 手が痛いのか?」

「八雲さん……」
 
名前を呼ぶのと同時に、彼の身体を抱きしめる。左腕が痛むのも気にせず、その身体を強く強く抱きしめた。

「か、芳奈、どうした?」

「だって、もう戻ってきてくれないと思ってたから。八雲さんがいなくなると思ったら凄く悲しくて、涙止まらなくて……」
 
その言葉の続きを言おうとして、この涙の意味に気づく。

惨めだったからじゃない、嫌われたからじゃない、悲しかったからじゃない。それは……。
 
八雲さんのことが好きだったから──。
 
それがわかってしまうと、胸の苦しさが消えホッと息を吐く。涙も止まり、抱きついたまま、八雲さんを見上げた。


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