強引な副社長の婚前指南~偽りの極甘同居が始まります~
「運転中に危ないっ……あ、あれ、コンビニ?」
 
いつの間にか、車は駐車場に停まっている。なら大丈夫か……じゃなくて!

「八雲さん、人が見てます。離れて……」

「ヤダね」
 
間髪を入れずに答えた八雲さんは、私の顎を掴んで無理やり押し上げた。

「俺とキスしたいかどうか『よくわかりません』とかバカなことを言う“彼女”には、ちゃんと教え込まなきゃいけないだろ?」
 
八雲さんは彼女の部分を強調して言い、人の悪い笑みを浮かべ私の耳に顔を寄せた。

「なあ。今の俺って、芳奈のなに?」

「なにって、それは……んっ」
 
耳にふっと息がかかり、背中にピリッと電流が走る。八雲さんからの甘い刺激に首をすぼめると、八雲さんの方を向いた。
 
私が八雲さんの彼女なら、八雲さんは私の……。

「……彼氏、です」

「そう、正解。ちゃんとわかってるじゃないか。だったらさっきの質問をもう一度。ねえ、芳奈は俺とキス、したくない?」
 
そう聞かれたら、彼女としての答えはひとつしかないことに気づく。でも八雲さんの顔を見たままでは恥ずかしくて、ほんの少し俯いた。


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