強引な副社長の婚前指南~偽りの極甘同居が始まります~
「したい……です」
 
少しだけ、“彼女”の気持ちがわかったような気がする。

「そう、よくできました。じゃあ、ご褒美だな」
 
私の唇にチュッと柔らかいキスをした八雲さんの顔はとても満足げで、何故か私まで嬉しくなってしまう。八雲さんのこんな顔が見れるなら、彼の“彼女”も悪くない。

「今日は芳奈のことを、今以上に甘やかして可愛がるから、そのつもりで」

「え?」
 
そのつもりって、どういうこと? 甘やかして可愛がるとか、私の身が保つか心配になってきた。

でも今日はもともと、父の前でも恋人を演じられるように特訓すると決まっていた。そのためのデートなんだから、心配するより当たって砕けろ。手強い父を乗り越えるためには必要不可欠、大事なことなんだとあらためて思い直す。

「八雲さん、今日はよろしくお願いします」

「あ、ああ、こちらこそ。でも肩の力は抜いて、いつもの芳奈でいいからな。あとは全部、俺に任せておけ」
 
甘かったり厳しかったり、今日の八雲さんはコロコロと表情が変わるけれど。なんとなく楽しくなりそうな予感に、胸躍る私がいた。


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