強引な副社長の婚前指南~偽りの極甘同居が始まります~
郊外の複合施設にひとりで出掛けるなんてこともないし、確かあそこには私の好きなショップがあったはず。買い物なんて久しぶりだし、それはそれで楽しみだ。

駐車場に到着すると、意気揚々と歩き出す。先に行く私の手首を、八雲さんがパシッと掴んだ。

「おい、ちょっと待った」
 
突然掴まれた手に引っ張られ、八雲さんの身体に軽くぶつかる。驚いて顔を上げれば、表情を歪ませ少し怒ったような顔が目に入る。

「彼氏を置いて行くなんて、薄情じゃないか?」

「あ、そうでした。八雲さん、ごめんなさい。ちょっとテンション上がっちゃって」
 
ハハッと苦笑してみせる。

「楽しいことはいいことだけど、俺を忘れてもらっては困るな」
 
手首を掴んでいた八雲さんの手がゆっくり移動して、私の手をふわりと包む。顔をじっと見つめながら何度か手の甲を擦ると、スルッと手を握った。

それぞれの指を絡ませる、いわゆる“恋人繋ぎ”というやつで、途端に顔がカッと熱くなって目をそらす。


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