強引な副社長の婚前指南～偽りの極甘同居が始まります～

「恋人たるもの手を繋ぐなんて、基本中の基本。いちいち照れていたら、一日身が保たないぞ」

「は、はい。気をつけます……」

「気をつけますって。今の俺は彼氏なんだって、何度言えばわかる？　またここでキスして、わからせるか？」

今、ここで？　周りを見渡せば、土曜日だからか駐車場でも多くの人が行き交っている。ここでキスなんてしようものならば、一気に注目の的。そんなところを見られたら、お嫁にいけなくなってしまう。

でも、なんでだろう。さっきから胸のドキドキが止まらない。八雲さんは恋人であって、でも本当は恋人じゃないのに……。

「キスは遠慮しておきます」

「わかってるよ、バーカ」
　
頭をぽんと撫でると、私の手を引いてスタスタと歩きだす。

私の歩幅に合わせてくれているのか、穏やかなスピードと握られている手の温もりに心地よさを感じながら八雲さんと肩を並べて歩いた。