俺様社長と<期間限定>婚前同居~極上御曹司から溺愛を頂戴しました~
 そう言われ、うつむいた頬が熱くなった。きっと私の顔は、タコみたいに真っ赤になってる。

『だから、そうやって私の大事な綾花をたぶらかすな!』

 大声で怒る姉に対し、貴士さんはくすくすと楽し気に肩を揺らして笑っていた。

 貴士さんの『かわいい』という言葉に、深い意味があるわけない。
 わかっているけれど、私はどんどん大きくなっていく貴士さんへの憧れを止めることはできなかった。




 そして、その憧れが本当の恋に変わったのは、大学生のとき。

 私は祖父の勧めで参加した大きな書道展で、最高賞を受賞した。

 出席した表彰式で賞状と花束とともに祝福の言葉を贈られた。
 目立つ場所は苦手だったけれど、和装で壇上に上がった私を見て、祖父や家族たちはとてもよろこんでくれた。

 けれどステージから降り控室に帰ると、先に戻っていたほかの受賞者たちの会話が聞こえてきた。
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