俺様社長と<期間限定>婚前同居~極上御曹司から溺愛を頂戴しました~
 それは祝福ではなく非難の言葉だった。

『彼女が賞をもらえたのは、名家の葛西家の娘で有名書家の孫だからだ』
『女子大生書家の最年少受賞という話題性が欲しかっただけだろう』

 花束と賞状を抱えた私は、頭から冷水を浴びせられたようにその場から動けなくなってしまった。
 しだいに批判の矛先は、私だけではなく賞や葛西家にも向けらる。

『葛西家も忖度でもらった賞を喜ぶなんて、ずいぶん落ちたものよね』
『それに、あんな小娘に賞をあたえるとは、この書道展の格が疑われる』

 ひそひそとささやき合う声があちこちから聞こえた。
 さっきまで胸にあふれていた喜びは消え去る。

 いつまでも続く、私や賞の主催者への不満。
 ひとり廊下で立ち尽くしていると、手足がどんどん冷えていく。
 
 ぐっと唇をかみしめたとき、後ろから腕がのびてきて誰かが私の肩を抱いた。

『あんな醜い嫉妬は、気にしなくていい』

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