俺様社長と<期間限定>婚前同居~極上御曹司から溺愛を頂戴しました~
 低い声で言われ、はじかれたように振り返る。
 見上げた視界に映ったのは、緩く波打つ黒髪と、男らしい横顔。

 私の肩を抱いていたのは、貴士さんだった。

 中学のころは頻繁に我が家にやってきていた貴士さんだけど、彼が高校に進学してからは滅多に顔を合わせなくなった。

 貴士さんは実家の都築コーポレーションに就職していて、都築コーポレーションは今回の書道展のスポンサーだから、その関係で来場したのかもしれない。

 私は憧れの人の突然の登場と、距離の近さに言葉がでなくなる。
 動揺のあまり頬が熱くなり瞳がうるむ。

 そんな私を見下ろして、貴士さんは『泣いているのか』と眉をひそめた。

『こうやって、俺以外の人間が綾花を泣かせるのは、おもしろくないな』

 言いながら、長い指で私の目じりをなぞる。

『泣いていません』

 素直じゃない私は、強がって突き放した言い方になってしまった。
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