俺様社長と<期間限定>婚前同居~極上御曹司から溺愛を頂戴しました~
 そのほかに、毎日欠かさず和机に向かい筆を持つ。
 広い部屋を掃除して、庭の手入れをして、ひとりぶんの食事を作り食べ眠る。
 そんな静かな日々を繰り返しているうちに、あっという間に二年が過ぎた。


 私が実家を出た後、都築家を継ぐと思われていた貴士さんはなぜか都築グループに退社し自ら起業した。
 対する姉は葛西家が運営する私立美術館のスタッフとして働きながら、長期休暇には世界中を旅行して、自由な独身生活を楽しんでいるようだった。

 貴士さんが都築グループを継がなかったせいでいったん縁談の話は保留され、その後ふたりの縁談が進展したという話は聞かないけれど、破綻したという話も聞いていない。

 それなのに、突然私と貴士さんが婚約なんて。

「理解できない……」

 母から電話で衝撃の報告を受けた翌日。
 私はひとりつぶやきながら竹ぼうきで玄関前の掃除をしていた。

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