俺様社長と<期間限定>婚前同居～極上御曹司から溺愛を頂戴しました～

　ぽかぽか陽気の中、春風が吹くたびに門の脇にある八重咲の桜からピンク色の花びらが舞い散る。

　とても綺麗だけど、八重桜は花びらの量が多い。
　門から玄関までの敷石の上に積もって、生徒さんが足を滑らせたら大変だ。
　そう思い、私は掃除に精を出す。

「綾花先生ー！」

　声をかけられ顔を上げると、斗真くんがこちらにかけてくるのが見えた。

　どうしたんだろう。
　土曜日の今日は授業の予定はないのに。

「斗真くん、こんにちは」
「綾花先生、着物だ！」

　挨拶を返した私を、斗真くんは頭のてっぺんからつま先までまじまじと見つめる。
　今日の私は、若葉色の紬の着物を着ていた。

「お正月でもないのにどうしたの？　どっかにでかけるの？」

　その質問に、苦笑しながら首を横に振る。

「普段から書道教室のない日は、なるべく着物を着るようにしているんですよ」