俺様社長と<期間限定>婚前同居～極上御曹司から溺愛を頂戴しました～

　グレーの薄手のニットの上に黒いジャケットを羽織った貴士さんは、テレビの中の俳優さんのように洗練されていた。

　貴士さんは東京で起業して、今は立派な経営者だ。
　きっと、田舎町でのんびり書道教室をしている私とは、別世界のようなきらびやかな暮らしをしているんだろう。

「横取りじゃなく、俺は綾花の正式な婚約者だ」

　そう言い切った貴士さんは、視線を私に向ける。

「な」と甘い流し目で同意を求められ、頬に熱が集まった。

　戸惑う私をよそに、貴士さんは斗真くんを紳士的に追い返す。
　そしてふたりきりになると、貴士さんは私に微笑みかけた。

「綾花、久しぶりだな」

　貴士さんの挨拶に、私は無言でうなずく。

　ずっと憧れてきた貴士さんを前にすると、幼い子供に戻ったようにうまくしゃべれなくなった。

「婚約の話は聞いたか？」

　その問いに、私はまた首を縦に振る。