荒野を行くマーマン
そして本日6月1日付けでの勤務開始となったのである。

ちなみにこれらは魚住君が事故に遭った際に、一時騒然となった社内で先輩や上司が口にしていた情報や、その後も定期的に入ってくる風の便りをつなぎ合わせて自分なりに整理したものだ。

失礼ながら水泳だけに限らず、スポーツ全般に全く興味のない私は、もし同じ会社の社員同士じゃなかったとしたらそういった魚住君の歴史はおろか、存在さえ知らずに一生を過ごしていたことだろう。


「運動部の奴らは毎日時短勤務で、しかも大会がある度に抜けなくちゃいけないんだもんな。重要なポジションは任せられないだろ。実際、あいつの場合は工場の事務所内で電話番みたいなことしかしてなかったらしいし。パートのおばちゃんくらいのスキルしかないじゃねーか」

「会社の名を背負って、広告塔として競技に参加してくれてるんだから、その活動に差し支えないような勤務体制になるのは当たり前じゃないかな」


再び講釈を垂れ始めた岩見君に向けて、私は今度こそ反論した。

「彼らの活躍を見る事で私達一般社員の士気も上がる訳だし…。そもそも「パートくらいのスキル」って何?社員だけでは手が足りない部分を補って欲しいからこそ雇うんだよ?企業にとって重要な人材である事に変わりはないよ。むしろ、職場によっては新人の正社員よりパートの方の方が業務内容を熟知していたりするし」

「屁理屈言うなよ。仕事に関しての最終的な責任の重さとか、会社への貢献の度合いとか、なんやかんや言って正社員の方が重圧を背負ってる事に変わりはないだろ」


岩見君は私の言葉をバッサリと切り捨てた。
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