荒野を行くマーマン
相変わらず他人に厳しい人だな、岩見君は。

私と彼は2年前、大和重工に採用され、共に東京本社勤務となった。
いわゆる同期というやつだ。

といっても私は庶務課で岩見君は人事課だけど。

企業の中核を担う部署に配属された事で分かるように、岩見君は有名難関私大を卒業し、鳴り物入りで入社して来た優秀な人。
同期の間では一番の出世頭だと評されている。

そんな人が、こんな平凡な私のどこを気に入ったのか、実は研修中に「付き合ってくれないか」と告白をされていて。

まだ人となりが分からないし、これからのハードな社会人生活を思うとそれどころではなくて交際自体はお断わりしたのだけれど、「周りに気を遣わせない為にも、告白した事は内緒にして欲しい。そして今後も男友達の一人として交流を続けて欲しい」とお願いされたので、同期の皆で集まる際はもちろんのこと、こんな風に二人だけの食事の誘いにも応じている。

話題は豊富だし、向上心があって堂々としていて、そういうところがとても尊敬できると思ったし自分も成長できるような気がして付き合いを継続して来たけれど。

…だんだん、その断定的な物言い、押しの強さがしんどく感じるようになって来た。

私自身は人の事をあれこれ言えるほど優秀な人間じゃないから。

とても肯定する気にはなれないし、かといってちょっとでも否定的な事を言おうものなら倍になって返ってきて最終的にねじ伏せられるように話を終わらせられるので精神的なダメージが半端ない。

こんな気持ちになってまで会う必要など微塵もないよね、としみじみ思う。

だから今後は徐々にフェードアウトしていこうと考えているのだけれど、そのやり方をしくじるとこれまた厄介な事になりそうで、それもまたストレスになっていたりする。

再度ため息を吐きながら、私はウーロン茶を静かに啜った。
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