後輩くんはワンコ時々オオカミ


「おー怖ぇぇ、なんだアレ
てか、涼太騙されてやんの?」


クスクス笑う新太


それに同調するように
周りに居た女子が声をかけてきた


「古崎君、騙されたの?」
「秋山さんって酷〜い」
「実行委員のジャンケンだって
後出しだったんだから〜」


次々と止まらない女子のお喋りに
気分が悪くなる

確かに秋山さんは俺を騙して眞子先輩との時間を邪魔したけれど

それに対して怒って良いのは俺だけだ

だからといって女子達と波風を立てたい訳じゃない


周りの音を遮断するように
ポケットから携帯を取り出すと

女子達に背中を向けて
眞子先輩へのメッセージを打ち込む


【眞子先輩、さっきはごめんなさい】


すぐ既読になるそれを見つめていると


【全然平気。委員は忙しいもんね】


眞子先輩らしい返事がきて
申し訳ない気持ちが生まれると同時に
うちのクラスの女子との違いに気持ちが緩む

眞子先輩には騙されたなんて言えない

だって、秋山さんは俺と眞子先輩との間を邪魔しようとしたんだから


【大したことありませんでした
帰りも迎えに行きますから
絶対待っていてくださいね】


体育祭までは平日の部活動は停止
そのことで眞子先輩と一緒に帰れることが嬉しい

それに、教室へ迎えに行った時
また飯田さんに睨まれたから

眞子先輩に俺が行くことを伝える必要もある


【うん、待ってる】


眞子先輩からの返事に
さっきまでのささくれだった気持ちが
凪いでくるのがわかる


携帯を見つめたままの俺に


「涼太、すげー気持ち悪い顔してる」


新太は耳元でムカつくと付け足した

新太だって眞子先輩のファンの一人だったのだ
新太の気持ちひとつで敵にも味方にもなる

敵が多いほど燃えるけれど
出来れば友達は敵にしたくないのが本音

だから新太に「応援してくれよ〜」
嘘泣きを入れてみた


ムカついて結構!気持ち悪い顔上等!
眞子先輩のことを想うだけで
笑顔になれるなら

俺は気持ち悪い男で良い!




side out







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