エリート外科医の滴る愛妻欲~旦那様は今夜も愛を注ぎたい~
「お久しぶりです。透佳……さん」

よくも悪くも、久しぶりに彼に会えた気がしてあらためて挨拶する。

昔のように『くん』と呼ぶことを躊躇われ、他人行儀な『さん』を使った。もう彼は三十二歳だし、『くん』はまずいよね。

「やっと喋ったかと思えば。相変わらず、俺に懐かないヤツ」

彼は私を品定めするようにギロリと見下ろす。

懐いてほしいなら、まずその威圧的な態度をどうにかしてほしいものだけれど。

とはいえ文句も言えず、びくびくしていると。歩み寄って来た彼に、突然顎をすくい上げられた。

「ひゃっ……」

触れられたことに驚いて、変な声をあげて後ずさる。

しかし、後ろに足を踏み出した途端、草履がレンガの合わせ目に引っかかってしまった。

「わっ……!」

もう片方の足でバランスを取り直そうとするが、振り袖の裾に邪魔されてうまく足が開かない。

転ぶ! そう思い地面に手をつこうとしたところで。

「アホ」

彼の力強い腕が私の腰に回り、転ぶ寸前で受け止めてくれた。

まるで鉄棒でもしているかのように、両手と左足がぶらんと投げ出される。

右足だけはかろうじて地についていたけれど、結構な体重がその腕に圧しかかっていたに違いない。

共倒れにならなくてよかったという安堵と、細く見えるのに意外と力があるんだなぁなんていう、ある種呑気な感嘆が入り混じった。
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