エリート外科医の滴る愛妻欲~旦那様は今夜も愛を注ぎたい~
「ここ。動いているのが弁だ。それくらいはわかるよな?」

確か、授業で習った気がする。血液を逆流させないためのバルブの役割をしているものだったか。

指を差した箇所には、灰色の突起が水を送り出すようにピクピクと動いており、その動きに合わせて血液が流れていた。

「この瞬間。わずかに、血液が逆流しているのがわかるな?」

血液を送り出した直後。閉じようとした弁の隙間から、わずかに血液が戻っていくのが見て取れた。

「弁の閉鎖不全。つまり、弁が正しく機能していないんだ」

ゾッと背筋が凍った。それってもしかして、心臓がまともに動いていないってこと?

薬で治るような病気なのだろうか。それとも……手術?

蒼白になった私を見て、透佳くんは息をつく。

「今は軽度だ。様子見でかまわない。だが、悪化すれば手術が必要になる」

隣の沢渡先生が説明をつけ加える。

「軽度とはいえ、注意は必要ですよ。普通の人より、心機能が低下しているわけですから。この部分、滞留している血液に細菌が繁殖して感染症を引き起こす場合もあります」
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