エリート外科医の滴る愛妻欲~旦那様は今夜も愛を注ぎたい~
「んっ……」

思わず漏れたのは惚けた吐息。

気がつけば『いじめられっ子の彩葉』ではなく、ひとりの女性になって、その男性のキスを受け止めていた。

すがるように彼の胸に手を置いて――。

「……ぅん……んん!?」

自分の声で我に返り、慌てて彼の胸に手を突っ張った。

私、何をしているのだろう。大嫌いな彼なのに、唇を奪われた挙句、うっとりしちゃうだなんて……!

警戒心が蘇ってきて、慌てて距離を取る。

けれど、緩みきってしまった身体は、思ったように動かなくて。膝に力が入らずガクンと折れた。

「っ……!」

転びそうになった私を、彼はまたしても抱きとめる。帯の下に腕を通し、しっかりと私の身体を支える。

「……まったく。何度転べば気が済むんだ」

頭の上からこれっぽっちも愛情の感じられない悪態が響いてきた。
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