エリート外科医の滴る愛妻欲~旦那様は今夜も愛を注ぎたい~
怒らせてしまっただろうか、そう思い恐る恐る目線を上げてみると、目の前にあったのは、意外にも私を心配する不安げな表情だった。

その瞬間、頭の中にノイズが走った。

遠い記憶がフラッシュバックする。

壊れたテレビのような残像の中、わずかに見えた光景とその声は。

心配そうな顔をした少年。こちらをじっと見つめて、恐る恐る唇を動かす。

――お前が好きな花だろう?――

「……透佳くん……?」

気がつけばその名を口走っていた。

視界がゆっくりと定まって、目の前に現れたのは神経質そうな彼。

「……やっとその名で呼んでくれたな」

そう言って気難しい表情を緩め、フッと笑みを漏らす。

それは彼が初めて見せる優しい笑顔だった。

心臓が一度バクンと大きく鼓動し、次いでせわしない早鐘を刻み始める。

「さすがに、高校生の頃は、小学生のお前相手にキスしたいなんて考えたことはなかったが……」

整った前顔をくしゃっとかきあげ、赤い舌をペロリとちらつかせる。

「大人になったじゃないか、彩葉」
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