エリート外科医の滴る愛妻欲~旦那様は今夜も愛を注ぎたい~
『ありがたいことに、父についてきてくれた社員たちもいた。その人たちを守りながら、今を続けていくことが、お父さんの望みなんじゃないかしら』

「お父さんは、このままがいいってこと……?」

『そうね。新しい仕事どうこうより、彩葉の笑顔を見ているほうがずっと幸せなはずよ』

心が温かくなる。まるで、胸の中にひまわりの花が咲いたみたいだ。

父と母の愛情を一心に受け継いで、今の自分があるのだと実感する。

『お父さんとお母さんは、充分幸せになった。だから今度は彩葉の番よ。自分のことだけを考えて生きていきなさい』

「はい……」

それだけ答えて、通話を切った。

自分の心に真っ直ぐに、納得できる道を歩もうと覚悟を決める。

父だって、成功ばかりではなかった。紆余曲折を経て、辿り着いた先で見つけたものは、きっと当初の予定とは違っていただろう。

しかし、それが今ではかけがえのないものになっている。

目標には辿り着けなくとも、決して恥ずべき人生ではなかったはず。

それはいつだって真剣に、正しいと思うことをやってきた証だ。

透佳くんに別れを告げよう。それから、融資の話をお断りしよう。

自室のテーブルの引き出しから、半分に割れた名刺を取り出して、その番号にコールした。
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