エリート外科医の滴る愛妻欲~旦那様は今夜も愛を注ぎたい~
「こんばんは、早風さん。先日のお話は、考えていただけましたか」

ウェイターが椅子を引いてくれる。腰かけながら、私は「はい」と答えた。

「透佳くんとはお別れしようと考えております」

「おお、そうか。よく決心してくれた」

食前酒のワインを勧められたが断った。

沢渡先生は車で来たのだろうし、お腹に赤ちゃんのいる美沙さんは当然アルコール禁止。教授だけが上機嫌で呷っていた。

「で、須皇先生は、なんと?」

「納得できないとのことでした。ですので、すべての事情をお話しする許可をいただきたくて――」

「それは少し待ってもらいたい」

強い口調で止められ、私はぴくりと肩を揺らす。教授は、グラスをテーブルに置き、神妙な顔をした。

「お腹の子どもが安定期に入るまで待ってほしい。産むなと言われても困ってしまう」

「透佳くんは、そんなこと言いません」

助けを求めるように美沙さんへ視線を向けたが、すかさず目を逸らされる。

美沙さんは、透佳くんが『産むな』なんて言うような薄情な人間だと思っているの?

妊娠したと報告することもためらってしまうくらいに。
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