エリート外科医の滴る愛妻欲~旦那様は今夜も愛を注ぎたい~
「安心しているんじゃない、ことの重大さに気づけ」

赤信号で、強めにブレーキを踏み込む透佳くん。身体が前後に揺らされて、何事かと彼を見上げる。

次の瞬間、彼の手が私の顎を掴んだ。顔の近くに引き寄せられ、驚いた私は目を丸くする。

ちょっぴりイラ立った、強欲な瞳。

「彩葉の唇は俺だけのものなのに。本当は沢渡を殴りつけてやりたかった」

そう吐き捨てて私の唇を奪う。

深く舌を絡ませたあと、信号が変わったことを視界の端で確認すると、何事もなかったかのように運転に戻った。

顔がぽうっと赤くなる。一瞬の唇の圧力が、すごすぎて。

心も身体も丸ごと持ち去られた感覚。

これに比べたら、沢渡先生とのキスなんて、お遊びみたいなものだろう。

「あの、沢渡先生とは、全然こんなんじゃなかったですからね? もっと挨拶程度の、フレンチな――」

「思い出すな! 記憶から抹消しろ」

彼は忌々しく言い放ち、ハンドルを強く握る。

もう二度と思い出すまいと心に誓った。


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