みずあめびより
注文した料理が来るまでには少し時間がかかった。クラフト紙に書かれたメニューを眺める。

torta(トルタ)ってイタリア語?タルトのことかな?」

鈴太郎が豊富なスイーツメニューを見ながら言うと衣緒がすぐに答える。

「タルトに限らずケーキのことですよ。」

「そう言えば、家に来た時イタリア語勉強してたな。もしかして『衣緒(いお)』って名前はイタリア語の"io(イオ)"から来てるのか?英語で言う"I(アイ)"だよな。」

「そうです。『自分らしさを大切に』って想いを込めてつけられたそうです。ご存じなんですね。さすがです。」

「・・・いや、彩木さんが勉強してたから気になってイタリア語について調べたんだ。」

「・・・。」

───気になってくれたなんて、嬉しい。

「いい名前だな。」

「ありがとうございます。葉吉さんのお名前はどんな意味なんですか?」

「親が鈴蘭の花が好きらしい。ちょうど咲く頃に生まれたんだ。あと、静かに音を鳴らして人を導けるようになってほしいって。今だと『凛とする』の『凛』の方が使われてそうだけど。」

「鈴蘭の花言葉って確か・・・。」

「「再び幸せが訪れる」」

二人で同時に言う。

「春の訪れを知らせてくれる花なんですよね。他に『謙虚』とか『純粋』とか。」

「さすが、すごい暗記力だな。」

「素敵な意味のものだけ覚えてるんです。」

「そっか・・・。」

───さらりと嬉しいこと言ってくれるんだよな。

「名付けられた通りになられたんですね。あ、鈴蘭て毒あるけどそれはなしで。『毒なし鈴蘭』ということで。」

衣緒はにっこりしながら言う。

「・・・。」

鈴太郎は思わずテーブルの下で彼女の手に手を伸ばした。
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