みずあめびより
「・・・はい。」

わずかな明かりの中で衣緒は静かに頷いた。



寝室のベッドで並んで布団に入る。

「・・・。」

衣緒は天井を見つめながらうるさいくらいに鼓動を主張する心臓を手で押さえたいと思いつつ、シングルベッドで鈴太郎との距離も近いのでそんな動きをしたら彼にもわかってしまうと思い、体を硬直させていた。

───『はい。』って頷いちゃったけど・・・これは・・・そういうこと?でも私達つきあってまだ数日だよね・・・前の彼の時は、初めて泊まった日に・・・でもこんなにすぐ泊まりに来たりしなかったからな・・・。つきあって3ヶ月くらい・・・。新貝さんも言ってたけど世間ではお泊まり=そう、なのかな・・・。あれ、そう考えるともしかして私、すぐ泊まりに来るとかすごいことしちゃってる?前に泊めてもらったことあるからって・・・。

「・・・。」

鈴太郎も天井を見つめながら、自分の胸の鼓動の速さに戸惑っていた。

───この状況で今までの彼女だったらそうなってたけど・・・むしろ昨日の時点で一緒に寝て・・・でも衣緒だから・・・全力で大事にしたいから慎重になってしまう。いきなり進んで嫌われたくない。朝は眠くて寝ちゃったしごみ捨てもあったから気持ち抑えられたけど。一緒に寝るのOKっていうことはいいのか?むしろ、先に進まなかった方が嫌か?とにかく、どこか触れたり目が合っちゃったりしたら理性なんてなくなるかも・・・。

「・・・どうしますか?」

悶々としている鈴太郎の方に衣緒が顔を半分向けて尋ねた。

「えっ!?」
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