イケメン男子と疑似恋愛⁉︎
サーっと風が吹き、私の髪を攫っていく。
それを向葵くんにかからないようにと、髪にばかり意識を向けていると。
トンッ──
私の肩に、小さな、重み。
えっ……?
左肩に一気に集中する神経。
ドクドクと流れる鼓動を抑えながら、恐る恐る左を向くと。
そこには、栗色に揺れる髪の毛が見えた。
──あ、向葵くん…っ?
意識しだすと、それが合図のように、一斉に全身を巡る血が熱くなった感じがして。
ドキドキ、ドキドキ──
他のことなんて何も考えられなくなる。
(……ど、どうしようっ…!)
これじゃあ身動きもとれない。
少しでも動いてしまえば、向葵くんの身体がズレて地面に倒れてしまうかもしれないから。