近くて遠い私たちは。
5.サクとの別居
サクとの物理的な距離が開いたのは、サクが高校を卒業し、大学生としての新生活を始めた時だった。
家から通えないほど遠い大学に入学したので一人暮らしを始めた、という訳ではなく、自分の意思で家を出て行ったのだ。
大学は電車に揺られて小一時間もすれば着く距離にある。
要は実家だと自由が利かないとかそういう理由だろう。
好きな時に女の子を連れ込めないし、生き物も飼えない。
その上血の繋がらない兄貴を恋愛対象として見る馬鹿な妹が居るんじゃあ、心底居心地が悪かった事だろう。
サクは私から逃げたかったのだ。
私はサクを引き止めなかった。
そばにいて欲しいという本音を隠して、報われない恋に終止符を打つチャンスだと前向きな気持ちで上塗りをした。
サクが家を出てから四年半の時が流れるが、恋心は消える事なく、しぶとく私の中で居座り続けた。前述したが、サクが定期的に私の前に顔を見せるからだ。
その間に私も高校を卒業し、大学生になった。
周りの友達から彼氏とのリア充生活を聞くたびに、彼女たちを羨ましく思った。私もサク以外に、サク以上に好きになれる男の子の存在が欲しいと願った。