医者の彼女
父「何とか言ったらどうなんだ?
あれだけ医者とは関わるなと言ったのにこのザマか?
今まで面倒みてやったことを忘れたとでも
言うつもりか?」

面倒っていうのはお金の事。

確かに、捨てられる時お金はちゃんと貰った。
金はやるから金輪際関わるな、と。

その前にもおじいちゃんに渡したり
していたっぽい。

…だから、何も言えない。

父「お前のようなやつがこんな所にきて…。
昼間喋ってたのは堂林総合病院の瀧医師だろう。
まさかお前…男を誑かして回ってるのか?」

誑かす…?そんなつもりない。
けど、この人を前に私は何も言えなくなる。

「…」

「フッ…確かにその格好…男を誑かすには
良い格好だもんな。育ちの良いフリでも
してるつもりか?」

次々に降り注ぐ貶される言葉。

心臓がドクドクと音を立てて、
息が上がっていくのがわかる。

「…ハァッハァ…」

いやだ。もう聞きたくない。
逃げたい…

そう思うのに、一歩も足を動かすことが
できない。
呼吸すらうまく出来ない。

そこに通りかかった京介さん。

京介「横から申し訳ありません。
うちのスタッフが何か失礼を…?」

父「スタッフだと?君の病院の職員か?
…だとすれば今すぐクビにするべきだ。」

京介「…いえ、彼女は急遽手伝いをお願い
した方ですが、何かご無礼でも?」

父「そうか。いや、いい。」

父親はそういうと、私に向き直り睨みつける。

父「…ならば今すぐここから出て行け。
仕事は終わったのだろう?
今後二度とこのような仕事は引き受けるな」

目は合わせないように、一礼して走って逃げる。
京介さんが何か言うけど聞こえなかった。

足がガクガクと震えて、うまく走れない。
それでも何とか足を前に出し走るが、
余計に息が上がる。

「ハッハッハッ…っ‼︎ゴホッゴホッ…」

苦しい…息が吸えない…
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