さくらいろの剣士1
目の前に、見覚えのある制服があった。
いつも県大会の決勝戦で戦う人たちが着ていた制服だ。
私が前着ていたものより派手だけど、嫌いじゃない。まさか自分がこれを着ることになるとは、思っていなかった。
でも、ここに来ることを決めたのは自分だ。
新しい制服を片付けたとき、ガチャリと音がして、人が入ってきた。
そこには、まだ新しい防具袋を担いだ凌太がいた。
「海南中学校 鬼城」という刺繍まで入っている。
「これ、さくらの。宮本先生から。」
床にドサッと防具袋を置いて、勝手に私のベッドに座り込んだ彼は、自分のスマホをいじり始めた。
「宮本先生からって…。さすがに貰えないよ。」
袋を開けると、そこには海南中学校が使っているオリジナルの剣道具一式が揃っていた。手拭いや垂れネーム、鍔や鍔止め、竹刀袋まで入っている。
「気にすんな。宮本先生がいいって言ってんだから。」
「でも…。」
これ、全部合わせると15万円はする。
「大丈夫だって。さくらがなんで海南に来たのかも知ってたし。受け取ってやれ。」
「わかった。」
まぁ、鈴鳴で使っていた防具とは色もデザインも違っていて困っていたから助かる。
結果で恩返しするということで納得することにした。
宮本先生は、今日会った若い先生のことだ。指導者としてだけではなく、人としても優秀だという話を聞いたことがある。
「さくら、荷物少なくないか?何を持ってきたんだ?」
急にこっちを向いて聞いてくるから驚いた。
「えっと。勉強道具と、服と、剣道具。」
「それだけ?」
「うん。」
凌太があきれたように笑った。
「さくら、本当に剣道バカだな。」
「うるさいな。凌太だってそうでしょ?日本一なんだから。」
皮肉のつもりだったけど、凌太は「まあな。」と言ってスマホに視線を落とした。仕方ないので、新しい竹刀袋に自分の竹刀を移す。
今まで使っていたさくらの花びらが刺繍された竹刀袋がからになる。
もうこれを使うことはないのだと、改めて思う。
逆に、青をベースにした海南の竹刀袋がいっぱいになる。
赤を基調とした防具に身を包んでいた私はもうどこにもいなくて、あおを基調とした防具に包まれるであろう、これからの自分を想像してみる。
ダメだ、わかんない。
諦めて私もスマホを取り出して凌太の隣に座った。ゲームでもしようかと思ったとき、凌太が肩をつついてきた。
「LINE交換しよ?」
「いいけど。」
そう言って、無言で交換しながら思った。「これから同じ家で暮らすのに、意味ないんじゃないの?」と。
いつも県大会の決勝戦で戦う人たちが着ていた制服だ。
私が前着ていたものより派手だけど、嫌いじゃない。まさか自分がこれを着ることになるとは、思っていなかった。
でも、ここに来ることを決めたのは自分だ。
新しい制服を片付けたとき、ガチャリと音がして、人が入ってきた。
そこには、まだ新しい防具袋を担いだ凌太がいた。
「海南中学校 鬼城」という刺繍まで入っている。
「これ、さくらの。宮本先生から。」
床にドサッと防具袋を置いて、勝手に私のベッドに座り込んだ彼は、自分のスマホをいじり始めた。
「宮本先生からって…。さすがに貰えないよ。」
袋を開けると、そこには海南中学校が使っているオリジナルの剣道具一式が揃っていた。手拭いや垂れネーム、鍔や鍔止め、竹刀袋まで入っている。
「気にすんな。宮本先生がいいって言ってんだから。」
「でも…。」
これ、全部合わせると15万円はする。
「大丈夫だって。さくらがなんで海南に来たのかも知ってたし。受け取ってやれ。」
「わかった。」
まぁ、鈴鳴で使っていた防具とは色もデザインも違っていて困っていたから助かる。
結果で恩返しするということで納得することにした。
宮本先生は、今日会った若い先生のことだ。指導者としてだけではなく、人としても優秀だという話を聞いたことがある。
「さくら、荷物少なくないか?何を持ってきたんだ?」
急にこっちを向いて聞いてくるから驚いた。
「えっと。勉強道具と、服と、剣道具。」
「それだけ?」
「うん。」
凌太があきれたように笑った。
「さくら、本当に剣道バカだな。」
「うるさいな。凌太だってそうでしょ?日本一なんだから。」
皮肉のつもりだったけど、凌太は「まあな。」と言ってスマホに視線を落とした。仕方ないので、新しい竹刀袋に自分の竹刀を移す。
今まで使っていたさくらの花びらが刺繍された竹刀袋がからになる。
もうこれを使うことはないのだと、改めて思う。
逆に、青をベースにした海南の竹刀袋がいっぱいになる。
赤を基調とした防具に身を包んでいた私はもうどこにもいなくて、あおを基調とした防具に包まれるであろう、これからの自分を想像してみる。
ダメだ、わかんない。
諦めて私もスマホを取り出して凌太の隣に座った。ゲームでもしようかと思ったとき、凌太が肩をつついてきた。
「LINE交換しよ?」
「いいけど。」
そう言って、無言で交換しながら思った。「これから同じ家で暮らすのに、意味ないんじゃないの?」と。