死にたがりの僕が、生きたいと思うまで。

「あづ、ん」
 怜央が鞄から私服が入ったビニール袋を取りだして、俺に手渡す。
「え、なんで」
「だって学校でもないのに制服着てたら、変に思われるだろ。あと、停学なら基本は家にいるはずなのに外にいたら、警察に絶対不審に思われるだろ。だからこれ着て、警察に見つからないようにしろ。ただでさえ家のことで不審がられてんだから、これ以上不審がられたらマズいだろ」
「え、俺家のことで不審がられてるなんて言ってないのに、なんで」
「そんなのお前の顔見ればわかる」
「ありがとう」
 おずおずと私服を受け取る。

「あづ、身体に気をつけろよ。俺はいつでもお前家に泊めるし、できることがあったら、なんでもするから」
「うん」
 頼れるものなら怜央を頼りたい。
 でも怜央を頼ったら、絶対母さんに怒られる。あのストラップに発信機か監視カメラがついてるはずだから。

「はー。また浮かない顔して。もう学校はやめだやめ! 俺についてこい!」
「えっ、れ、怜央!」
 ビニール袋を持ってない方の俺の手を掴んで、怜央は学校とは逆方向に歩き出した。

 一番近くの駅まで足を進めて、一時間ほど電車に乗り、原宿駅に着いたところで、電車を降りる。電車を降りても、怜央は俺の腕から手を離さなかった。
 改札を通るときに一瞬腕が離れたと思ったら、また腕を掴まれた。

「怜央、どこに行くんだよ」
「黙ってついてこい」
 俺の腕を掴んだまま、怜央は歩き出す。そのまま五分ほど歩くと、やっと怜央は手を離した。

 俺と怜央の目の前には、看板に【ロールアイス】と書かれたお店があった。
 ロールアイス? 
 アイス屋さんだろうか。
 店内の奥の方には厨房があって、よくあるクレープ屋みたいに、客が作っているところを見れるようになっていた。 

 内装はシンプルで、床もテーブルも椅子も木目調だった。テーブルは一つしかなくて、椅子も二つしかない。客が大勢来たらどうするつもりなんだろう。

「ロールアイスって何?」
「アイスクリームがロールケーキみたいに丸まってんの。ほら、あれだよ、あれ」
 怜央が厨房を指差す。
 厨房の前にはツインテールの女の子が立っていて、その子はロールアイスを作っている店員を、興味津々な様子で見つめていた。

 怜央と一緒に女の子の隣に移動して、厨房を覗き込む。

 スプーンですくったアイスを調理台の上に置いて、それを器具を使って平面になるよう、ゆっくりと広げていく。
 四角く、平面上に広がったアイスを器具を使って、クルクルとロールケーキみたいに巻いて、それをカップの上に入れる。

「何、これ。え、すごっ!」

 目を見張るような作り方に驚いて、思わず大声を出してそんなことを言ってしまう。店員が俺の声の大きさにびっくりして、顔を上げる。恥ずかしくなって、俺は慌てて店員から目を逸らした。
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