死にたがりの僕が、生きたいと思うまで。

「ご注文はございますか?」
 カウンターの後ろでお金を数えていた店員が俺と怜央に声をかけてくる。
 店の中には俺たちとツインテールの子しかいなかったので、その店員は見るからに時間潰しでお金を数えていた。

「あづ、どれがいい?」
 厨房の横にあるカウンターの前に行って、怜央は首を傾げる。

 カウンターにはメニュー表が置いてあった。メニュー表には抹茶のロールアイスと、いちごとベリーのロールアイスと、チョコバナナのロールアイスと、エスプレッソのロールアイスがあると書かれていた。メニュー表にはそれぞれの出来上がった時のイメージ写真も載っている。
 五種類。種類は少ないのに、どれも美味しそうに見えるから、どれを選べばいいのか全然わからない。

「え、どうしよう」
 何がいいんだろう。
「エスプレッソじゃない方がいいんだろ?」
「うん、甘いのがいい」
「なら俺が抹茶にするから、いちごかチョコかで選べば? 抹茶のは、一口やるから」
「え、いいの?」
 誰かと食べ合いなんてしたことないから、つい聞いてしまった。
「ああ」
「そしたら、いちごがいい」
 いちごのはトッピングにいちごだけじゃなくて、ブルーベリーやラズベリーものってるみたいだったから興味が湧いた。
「オッケ。お姉さん、いちごのロールアイスと、抹茶のロールアイスお願いします」
 怜央が店員に声を掛ける。
「かしこまりました。サイズはいかがいたしますか?」
「あづ、スモールじゃなくていいよな?」
 怜央が俺に確認する。
「うん」
「じゃ、両方ともレギュラーで」
「かしこまりました。お会計、千七百円になります」
 レギュラーだと一つ八百五十円だから、結構な値段だ。
 スモールサイズだと五百五十円なんだけど、せっかくだし、大きい方を食べたい。

「お待たせしました。チョコバナナです」
「わー。ありがとうございます!」
 突然、真横からそんな声が聞こえてきた。
 横を見ると、ツインテールの女の子が、厨房にいる店員からロールアイスを受け取っていた。
 アイスを受け取った女の子の瞳が、まるで、流星群を見た直後のようにキラキラと輝いていた。
 トッピングの生クリームが三センチくらいはあるんじゃないかってくらい大きい。トッピングは生クリームの他にはバナナとビスケットがあって、生クリームとアイスとバナナに、チョコソースがかかっている。
 アイスは色が白いから、たぶんバニラアイスだろう。

「うまそう」
 つい、そんな声が漏れる。

「俺たちのもすぐできるよ」
 鞄の中から財布を取り出して、怜央は言う。
「怜央、俺も払う」
 慌てて声を掛ける。
「いいよ。奢る。どうせあづ、そんな金ないんだろ」
「ごめん」
 お金なら一万円がまだあるけど、それは生活費だから、使わないで済むなら、できるだけそうしたかった。
「こんなことで謝んなよ」
 怜央は笑いながら、店員に二千円を渡した。
「二千円お預かりいたします。三百円のお返しでございます」
 店員はトレーにお釣りの三百円を置いて、それを怜央の目の前にやった。
「ん、あざっす」
 三百円を手にとって、怜央はいう。
「ありがとうございました」
 店員がそう言ったところで、俺達はカウンターを離れ、厨房の前に移動する。
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