俺様社長は溺愛本能を隠さない

「……いきなりですね」

憎まれ口を言って、恥ずかしさを隠した。

車は都筑さんのマンションへとどんどん進んでいく。
私が駄々をこねたところでおそらく逃がしてはくれないし、そもそも私にも、断る理由がなかった。

彼のキスを覚えている。
また二人きりになって、あのキスがしたい。

運転する都筑さんの唇を盗み見て、またすぐに戻した。

「埋め合わせをさせてほしい」

赤信号で停まる。

「有村がいいならな」

本当、ずるいって……。

私は助手席に沈み込み、窓の外を見て、寝たふりをした。
私なりのオーケーのサインだ。
もうどこへでも連れていって、好きにしてほしい。

それが海でも、都筑さんの家でも。


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