俺様社長は溺愛本能を隠さない

真剣な顔で消毒だなんて恥ずかしいことを言われると、そういうキスに思えてきて体が熱くなっていく。

気持ちが高まっているのは私だけじゃない。
唇から余裕のない吐息が漏れていることに、お互いに気付いていた。

「有村……可愛い」

前髪を触られると、くすぐったくて目蓋が揺れる。

「気付くのが遅すぎますよ」

「たしかにな。でも、独立するとき有村に声をかけたのは、多分そういうのも込みだったと思う。自覚はなかったけど、好きだったはずだ」

またいい加減なことを言うんだから。
でも、もうこの都筑節を聞くのは一周回って面白い。
少し疲れるけど私を振り回してこその都筑さんだ。

「私は今までずっと好きでしたよ。黙ってましたけど」

もう勝てないんだから、張り合うのはやめた。
三年引っ張られた私の敗け。

私を放し飼いにされたその間に、彼はデザイナーとして独立し、多くの顧客を獲得して大成功しているだから、生まれついての天才だ。

これからもそのサポートができればそれでいい。

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