俺様社長は溺愛本能を隠さない
花輪さんはさっきから心配そうに私を眺めては、首を傾げている。
相手に条件をつけられるほど私には特別なものはないし、こんなことを聞かれてもピンとこない。
彼女はファイルからいくつか資料を出して、今度はそれと私のプロフィールを見比べて話し始めた。
「莉央さんは若くて綺麗で、お仕事も頑張ってらっしゃるのにすごく謙虚だわ。お話も上手だし、ご両親も素敵な人。……正直、莉央さんレベルならとびきり条件の良い人を選べる。社長さん、お医者さん、弁護士さん。大企業に務めている人でも、公務員に限定しても大丈夫。年収も八百万以上で区切っても見つかるし、外見も良い人とマッチングできるわ。莉央さんはそういう男性会員さんが求める条件をクリアしているから」
花輪さんは「例えば」と言いながら一枚のプロフィールを選んで私へ向けて差し出した。
右上には若くて爽やかな男性の写真。
三十歳、大手営業職。年収一千万。趣味は海外旅行。
花輪さんはこのキラキラしたプロフィールの中で、一ヶ所だけを指差した。
「ここ。彼は身長が百六十五センチしかなくて、そこがネックなの」
百六十五センチなら、多分若林君と同じくらいだ。確かに平均より低いけど、欠点とは感じない。