俺様社長は溺愛本能を隠さない


──逃げてきてしまった……。

自宅の最寄駅にやっとたどり着くと、まだ午後四時の静かな賑わいがあった。
そこから住宅の路地へと入って、マンションへと向かう。

帰ろうとしたときは血相を変えた都筑さんに引き留められそうだったけど、若林君が諌めてくれたおかげでなんとかオフィスを抜け出せた。

若林君に色々と助けてもらっちゃったな……というか、都筑さんだけならまだしも若林君もいるのにまさか泣くなんて私……。

自分でも驚いた。

都筑さんに告白されて舞い上がっていた。

でも結局彼は秘書としての私を欲していただけで、それが揺らいだから慌てて好きだなんて言ってきた、という真相。言わんこっちゃない。

あーあ、涙が出尽くしたら今度は腹が立ってきた。
あの人、私を何回失恋させれば気が済むんだか。

気付きたくなかったな。都筑さんのことまだこんなに好きだったなんて。
消し去るのにまた三年かかったらどうしてくれるの。
本当、冗談じゃないって……。

ああ、また涙が出てきた……。

< 35 / 110 >

この作品をシェア

pagetop