俺様社長は溺愛本能を隠さない

「ヒ……!」

驚きすぎて声にならない声を上げ、彼の顔のそのまた向こうを確認すると白のハイブリッドの運転席はもぬけの殻となっていた。
瞬間移動……!?

「都筑さん、なんでっ……」

「近くにいるのかと思って。それに声もしたから」

そ、そうか、電話なんかしたら家の近くまで来てるのがバレて当然……。

足に力が入らなくなって路地にへたりこむと、都筑さんも同じ目線までしゃがんでくる。
また泣いてたところなんだから、覗き込まないでよ。
この人ずっと無神経だ。

「ちょっと話できるか」

「私は話したくないです……」

「俺は話したい。さっきのこと、勘違いさせたかと思って」

前髪をかきあげて、ばつが悪そうに。おおかた、弁解した方がいいと若林君にアドバイスでもされたんだろう。
年下の部下に。まったく。

彼も言っていたけど、都筑さんって恋愛偏差値が低すぎる。
わざわざ頑張らなくても女性が寄ってきていた証だ。腹が立つな。

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