俺様社長は溺愛本能を隠さない
「帰って下さい」
「そう言うなよ。乗れって」
「どこに連れていく気ですか?」
「どこでも。俺の家でもいい」
馬鹿じゃないの……。
「行かないです……」
「なら、車停めてくるからお前の家に入れてくれ」
「は!?」
「ちょっと行ってくる。待ってろ」
「えっ、ちょっ」
彼は脱け殻だった運転席に素早く滑り込んで行き、二区画先にある時間貸し駐車場へ向かってさっさと車を動かしていった。
ものの数秒で、目の前から嵐のように去っていく。
……嘘でしょう。これ私の家に上げる流れ?
そんな……あり得ない……。
こんな非常識なことってある……?
早く中に入らないと。
エントランスの中に入ってしまえば、都筑さんはこちらへは入れない。
どんなに喚かれようが無視すればいいんだ。
……無視して、閉め出してしまえばいい……。
……そう思うのに、どうしてできないんだろう……。
エントランスの外で棒立ちになっていると、車を置き、折り返し歩いてくる彼が見えた。
私って、どこまで馬鹿なの……。