俺様社長は溺愛本能を隠さない
そんな佐野さんの煮え切らない返答では弱かったらしく、若林君の疑問は止まらない。
「でも、ここに来てからしばらく観察してましたけど、社長って有村さんのことやたらと気にしてますよね。助手席に乗せるのも有村さんだけですし、小さなことで呼びつけてるし。会社立ち上げのときも、有村さんを秘書にするって最初から決めていたって聞きましたけど」
そうそう。
その疑問、私自身で何度思ったことか。
前の会社で私にだけ声をかけてくれて、本当に呼び寄せてくれて、秘書にされて。
私指名で頻繁に頼み事もしてくるし、二人きりになることも多いし。距離も近いし。
憧れていた人にそんなことをされれば、私だって勘違いしたし、期待もした。
でもそれはもうやめたのだ。
脈がないってよく分かったから。
「普通じゃないんですよ、都筑さんって。デザインのことしか頭にないんです。下心あるんじゃないかって思えることも、本当に全然ないんですよ。そんなつもり全くなく、ああいう接し方する人なんです。若林君は都筑さんみたいにならないで下さいね」