俺様社長は溺愛本能を隠さない

これは、罠か何か?
都筑さんと桃木さんがタッグを組んで、私をからかっているの?

平常心で仕事を進めようとしても、胸がきりきりと痛い。
今頃、二人が隣り合った車内で何を話しているのかと思うと、書いている文字を何度も間違えるほど冷静ではいられなかった。

「有村さん。相談があるんですけど、ちょっと良いですか」

「……若林君」

相談ではなく、都筑さんのことで私に話があるのだろうとすぐに分かった。
若林君は私達のいきさつを少し知っているし、応援してくれていた。

それがこんな状態になっていて、明らかに怒っている顔をしている。
私も同じ気持ちになっているけど、今は怒るよりも先に悲しくて仕方がない。

若林君は私をオフィスの裏口へと連れて行ってくれた。
外の空気を吸うと、少し楽になった。

「有村さんチョコ食べません? 出先で買ったんですよ」

若林君は私に手のひらを出させ、イチゴ味のチョコがいっぱい入った袋を傾け、手の上にくれた。

「……美味しい」

ちまちまとチョコをつまんでいると、甘さのせいでかすかに涙が出てくる。

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