イケメン同期から全力で逃げてますが、逃げ切れる気がしません!
「……そうなんだ」
なんだ、タワマン住民じゃないんだ。
雲の上に住んでるわけじゃないんだ。
車も国産だったし……むしろ意外と、堅実?
なんだ。
なんだ、そうなんだ。
みんな勝手なことばっかり、平気で口にするんだなぁ。
思うそばから、自然と口元が緩んでいく。
いや、別にだからって、どうでもいいんだけどね、そんなことっ。
「……がっかりした?」
ふいに響いたその声から、さっきまでの笑いが消えていて。
もしかしたら気にしてるのかと、勢いよく首を振った。
彼からじゃ見えないことに気づいたから、慌てて「そんなこと思うわけないよ」と付け加えておく。
「どっちかっていうと、ホッとした」
「……ホッと?」
「だってわたしたち、まだ入社4年目の平社員だよ? それでタワマン住んでたら、絶対金銭感覚合わないって思うもん」
「……ん、そうだな」
ぽつりと返ってきた言葉は丸く柔らかく、どこか優しさを帯びていて。
そのせいかな。
その後に続いた沈黙は、全然居心地の悪いものじゃなく。
わたしは彼を気にせず、落ち着いてメイクをすませることができた。