イケメン同期から全力で逃げてますが、逃げ切れる気がしません!

「お、思い出ってそんな大げさな……まぁ彼に連れてきてもらったことは間違いないけど」

これまで3回、彼と立ち寄ったここは、“Blue Moon”というお店。

バーなのに本格ビストロ並みに美味しい創作料理がいただける、ただし取材は一切お断り、と一部の間では有名なところだったみたい。

石畳の床と赤レンガの壁、渋い飴色のバーカウンターやスツール……
パリの路地裏に迷い込んだみたいな、おしゃれな雰囲気が気に入ってる。


「ここのオーナーが坂田くんと同郷で、しかも昔からの知り合いなんだって」
「へぇ、坂田って確か、川崎出身だっけ?」
「うん、そう」

わたしに尋ねる間にも、飛鳥の手はせわしなくカバンを彷徨い……
取り出したのは、コンパクトサイズの手帳とペンだ。

「会社の近くにこんな素敵なバーがあったなんて知らなかった。派手過ぎず、地味すぎず、居心地よくて。インテリアの選択がいいのね。アンティークかな、どこのメーカーだろ……」

ページを開くなり、ブツブツ言いながら何ごとかを書き込み始める。
仕事につながりそうなヒントを見つけたんだろう。

知り合って4年。
こういう姿はもう何度も見てるから、気にしないに限る。
そもそも、彼女が興味を持ちそうだなって思ったから、連れてきたんだしね。

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