イケメン同期から全力で逃げてますが、逃げ切れる気がしません!

「あ、美弥子ちゃん。ちょっとだけ、いいかな?」

お会計を済ませ、店を出ようとした時だった。
呼び留められて、足が止まる。

「私、先に外、行ってるね」
気を利かせた飛鳥がドアの向こうへ消えていくと、「こんなこと頼んで申し訳ないけど」と、眉を下げた流さんが近づいてきた。

「はい、なんでしょう?」

「慎太郎にさ、今度本を持って帰るように言ってくれないかな? 君の言うことなら聞きそうだから」

「本……ですか?」
話が見えなくてきょとんとしてしまったけど。
手招きされ、カウンターの中を見せてもらって――「うわ……」って絶句。

食器類に交じってそこに詰め込まれていたのは、枕にでもできそうなくらい分厚い本だった。しかも、何冊も。

MRって文字が見える。
薬学って言葉も……これって……

「参考書。あいつ、ここでよく勉強してるんだけど、そのたびに置いていくから、もう結構な量になっちゃって。うちはお前の物置じゃないって、何度も言ってるのに聞かないんだよね」

勉強……仕事絡み、だよね。
業界研究、ってやつだろうか。

ふと思い出したのは、熱心にメモを取っていた、さっきの飛鳥。
彼女も、大学の社会人向け講座受けてるって言ってたっけ。
もしかして坂田くんも、同じように努力してたりして?

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