イケメン同期から全力で逃げてますが、逃げ切れる気がしません!
♪ダダダダーン!! ジャジャジャジャーン!!♪~
色めいた空気は、けたたましい音楽であっという間に破られた。
聞き馴染みのあるクラシック。これは――「運命」?
珍しい選曲だけど、どうやら着信音らしい。
忌々しそうな舌打ちが聞こえた。
「さ、かたくん、の……?」
しぶしぶと言った風に頷いた彼が、内ポケットから携帯を取り出す。
「悪い。出ていい?」
「もちろんっ! どうぞどうぞ! わたしも、もう行かなくちゃ」
叫ぶように言って、腕の中から脱出。
「今夜はたぶん遅くなるから行けない。でも連絡するから」
「うん、わかった」
わたしがドアへ手をのばした時、彼が通話をオンにしたようだった。
「おいエージ、仕事中はかけてくんなっつっただろ」
エージ……?
あまり聞いたことのない、ぶっきらぼうな話し方が気になって。
のろのろと後ろ手にドアを閉めながら、隙間から洩れる声に束の間、耳をそばだててしまった。