イケメン同期から全力で逃げてますが、逃げ切れる気がしません!

その時、どうしてそんなことを口にしたのか、後で考えてもわからない。
ただ、一瞬よぎった不安がきっかけだったことは間違いない。

そのせいで、確かな言葉が欲しいと思ってしまったんだ――今すぐ。


「その“初めて”の夜って……い、イブ、とか?」


彼が、クリスマス嫌いだってことはわかってる。

それでも、もし。
もし今年、イブを一緒に過ごす相手として、わたしを選んでくれたなら。
このモヤモヤは、ずっと小さくなる気がする。
そしてこれから先もずっと、一緒にいられる気がする。

根拠なんてないけど、なんだかそんな気がして……

祈るような気持で口にした途端。
あぁしまった――……って、後悔した。

綺麗な眉間に、ざっくり深いしわが刻まれたから。
案の定。

「あー……ごめん。どうだろう。イブは、まだわかんねえな。しばらく忙しいし」

とってつけたみたいなセリフ。
頭が真っ白になった。

「そ、そっか……」

「あぁ。2月の初めにリーズメディカルのプレゼンが決まって、その準備を年内に少しでも進めておきたくて。あちこち、忘年会にも呼ばれてるし」

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